弥陀の19の願意を、釈尊が、『法華経』を中止してまで開説されたのが、王舎城の悲劇で有名な『観無量寿経』である。
吾子ほしさに占いに迷い、とても3年は待てない≠ニ、夫ビンバシャラ王をそそのかし、修行者を殺害させた韋提希夫人。
因果の道理に狂いなく、自分が産んで育てた阿闍世によって牢に入れられ、悲泣悶絶する。
察知された釈尊が、今の地獄にのたうつ者こそ、弥陀の本願のお目当てと、自ら、王宮に降臨なされ『観無量寿経』を説き給う。
慈顔あふるる釈尊に、邪見と自惚れの韋提希は、こんな愚痴を言い放つ。
「お釈迦さま。提婆は、あなたと従兄弟でありながら、あなたを殺そうとしています。私は、産んで育てた子供のために殺されようとしています。
なぜこの世は、こんな苦しい世界なのでしょう」
苦しくなると、誰しもが、蒔いた種を一切忘れて、愚痴を言うて八つ当たりするもの。 我身知らずの愚かさを、どう知らせたらよかろうかと、
しばらくは釈尊、無言の説法。
やがて、
「韋提希よ、汝はどのお浄土へゆきたいか」
と、二百一十億の諸仏の浄土を見せられる。
「本師本仏の、弥陀の浄土が一番好きです。どうすればゆけるのか、教えて下さい」
一生造悪の極悪人が臆面もなく、こういいのける。まさしく、地獄必定の相がここにある。
韋提希は、しかしまだまだ、気がつかない。
「西方に向かって端座して、この観法をすればよい」
十三の定善観を説きながら、できないことが、まだ分からんか≠ニ、種種に釈尊は方便なさる。
努めようとすればするだけ、ふきあがる阿闍世のチクショウ∞提婆のガキめ%{りと憎しみの心を、反省させ、
「韋提希よ。定善ができねば、心の乱れたままでいいから、散善をやってみよ」
と、廃悪修善をすすめていられる。